「一年目の看護師はどんな看護業務を行うのか」
「看護師一年目の給与、年間休日数などが気になる」
「看護師の仕事は辛いというけれど、実際どうなの?」

新人看護師の気になるあれこれにまるっと答えていきます。
当記事を読んで、一年目看護師の業務を深く理解していただき、看護師として働くモチベーションを上げていただけたらと思います。

新人看護師が一年間で学ぶ内容はこれ!

まず、一年目看護師の大まかなスケジュールは、

となっています。

看護技術の指導は、5月目でに基礎的な技術を学習し、6月以降は応用的な技術を学んでいきます。
多くの人が気になっているであろう夜勤の開始は、6月からの病院が多いです。
研修後、先輩看護師のもとでシャドーイングを行い、1月には日勤・夜勤共に一人でこなせるようになります。

新人研修の年間スケジュール

次に、月ごとの看護技術の研修内容を見ていきます。
以下は、日本看護協会の新人看護職員研修事業の事例集で紹介された北部地区医師会病院の新人研修の内容です。

時期(月)研修内容
4月・看護師記録と電子カルテ ・感染防止技術 ・日常生活援助技術 
・与薬技術援助 ・ME器機について ・注射・輸液管理技術 
・呼吸・循環を整える技術 ・トランスファ ・看護倫理
5月・キャリア形成サポート ・夜勤について ・BLS研修 ・褥瘡処置
6月・インスリン製剤に関すること ・創傷処置 ・包帯法
7月・事故防止対策(KYT)1回目 ・心電図
8月・急変時の看護 ・中心静脈注射の管理、感染防止対策
9月・理想の看護師像と自己の将来像 ・フィジカルアセスメント
10月・麻薬・血液製剤について ・緩和ケアについて ・ローテーション研修
11月・記録について ・ケースカンファレンスについて
12月・多重課題
1月・人工呼吸器
3月・事故防止対策(KYT)2回目
参考:日本看護協会「平成23年度新人看護職員研修事業の事例集 北部地区医師会病院(200床)

特筆すべきは、看護技術の研修だけでなく、キャリア形成や将来像などについても指導を行っている点です。
看護師はハードな仕事であるため、新人看護師が多く辞めてしまっていた過去があり、
それを少しでも軽減しようと、新人看護師の精神面でのケアを研修に加える病院が多いようです。

新人研修の流れ

STEP1.看護技術の指導

一年目の前半、特に4月・5月では業務に臨むための研修が多く行われます。

一般的に院内での研修が多く、先輩の看護師や臨床工学技士などから講義を受ける形になります。
その後に、先輩に付いてもらいながらシミュレーターで練習したり、機械の操作を実戦形式で行います。

STEP2.先輩のもとについてシャドーイング

看護技術を講義で学んだ後、すぐに実践で業務を行うかというとそうではありません。
それは、マニュアルと実際の現場の業務は全く違うからです。

シャドーイングとは、現場で働く先輩看護師や師長の後ろについて、実際の業務を学習する方法です。
ただ見ているだけでなく、メモをとるなどの積極的な姿勢を見せること、「ありがとうございます」」といった感謝の気持ちを伝えておくと良い印象を与えられるでしょう。

STEP3.実習課題の提出・自己学習

これは病院によりけりで、毎日振り返りのレポートがあるところもあれば、
全く課題はないというところもありました。

多く見られる課題は、研修内容の事前・事後のレポート、疾病や薬等についてのレポート提出といったもの。
もちろん、通常の看護業務に加えての課題になるので、負担に感じる方も多いようです。

STEP4.自立して看護業務を行えるようになる

新人研修とシャドーイングを終えたら、一人で業務を行うための準備に入ります。
具体的には、先輩看護師の見守ってもらいながら看護師業務を経験します。

その後、日勤業務自立となる10月あたりに、プライマリーの受け持ちが開始となります。
最初は軽症の患者さんを担当し、危険度の高い患者さんを持つことはありません。

少しずつ受け持つ患者の数を増やしたり、複雑な疾病を持つ患者さんを担当するなどして、対応できる患者の幅を広げていきます。

一ヶ月間の勤務スケジュール、気になる月給や夜勤日数は?

勤める病院が、2交替制の勤務形態を取っている場合は、一ヶ月間のシフトは以下のようなものになります。

1
日勤
2
夜勤
3
明け
4
休日
5
休日
6
日勤
7
日勤
8
夜勤
9
明け
10
休日
11
休日
12
日勤
13
日勤
14
日勤
15
日勤
16
休日
17
夜勤
18
明け
19
休日
20
日勤
21
日勤
22
夜勤
23
明け
24
休日
25
休日
26
日勤
27
日勤
28
日勤
29
夜勤
30
明け
31
休日

新人看護師は夜勤開始が6月以降になるので、6月以前は夜勤なしのシフトになります。
3交替制の一ヶ月のシフトは、「夜勤の勤務形態をスケジュールや深夜手当で比べてみた!」の記事を読んでいただければと思います。

初任給

大学卒と専門学校卒に分けた看護師の初任給は以下のとおりです。

設置主体平均税込給与額
(3年課程)
平均税込給与額
(大卒)
差額
(大卒-3年課程)
国立260,247271,48711,240
公立261,296271,93010,634
私立学校法人274,385283,5239,138
医療法人262,169268,9586,789
出典:2020年病院看護実態調査報告書

専門卒では約26万円、大卒では約27万円となっており、大卒の方が1万円ほど給与が高いです。
また、私立学校法人の病院も他と比べ、1万円ほど高給与となっています。

新卒看護師における専門卒と大卒の初任給の比較は以下の記事で詳しく解説しています。
【あなたの病院は大丈夫?】看護師の年収や待遇は大卒と専門卒でどう変わるのか

夜勤の日数

看護師の夜勤業務には、「2交替制」と「3交替制」という2つの形態があります。

2交替制とは、一日の勤務時間を日勤と夜勤の2つに分ける勤務体制です。

日勤8:00~17:00 (8時間勤務)
夜勤16:30~9:00 (16時間勤務・休憩2~3時間)

3交替制とは、一日の勤務時間を日勤、準夜勤、深夜勤の3つに分ける勤務体制です。

日勤8:00~16:30 (8時間勤務)
夜勤16:00~24:30 (8時間勤務)
深夜勤24:00~8:30 (8時間勤務)

看護師の夜勤回数は、この勤務体系に大きく依存します。
2020年病院看護実態調査(日本看護協会)では、2交替制の平均夜勤回数が4.7回となっており、全体の4割以上の看護師が4回以上5回未満の夜勤をしていると回答しています


一方で、3交替制は勤務時間が短いため、2交替制よりも夜勤回数は多いです。
3交替制の平均夜勤回数は7.7回となっており、こちらも約4割の看護師が7回、または8回の夜勤をしていると答えています

休日の日数

日本看護協会のデータによると、看護師の平均年間休日は115.1日となっています
しかし、これは病院の勤務パターンによります。

この2つが一般的な病院の勤務パターンになりますが、ここで注意してほしいのが週休2日制の定義です。

週休2日制は、2日休みがある週が一回だけあれば良いというものになります。
よって、月に5日しか休みがない場合も「週休2日制」と記載できるということです。
週休2日の病院に入る場合には、必ず月に何回休みがあるのか確認しましょう。

ちなみに、一年は52週あるので完全週休2日制では休日数は104日です。
仮に祝日・祭日も休みの職場である場合には、年間休日が約120日になります。

一方で、週休二日制(4週6休)の場合には、休日数は78日です。
週休2日でも、夏季休暇や年末年始といった休みはあると思いますが、それでも完全週休2日と比べるとかなり休みは少ないといえます。

看護師の一日タイムスケジュール

看護師が一日の仕事の中でどんな業務を行っているか紹介していきます。
夜勤のタイムスケジュールは2交替制のものを用いますので、3交替制のタイムスケジュールが知りたいという方は、以下のリンクから関連記事を読んでみて下さい。
関連記事:「【2交替制と3交替制でここまで違う】夜勤の勤務形態をスケジュールや深夜手当で比べてみた!

日勤の一日

時間業務内容
7:30〜出勤
8:00〜カルテ確認
8:30〜夜勤看護師からの申し送り
9:00〜点滴準備、検査準備
10:00〜病棟の巡回、バイタルチェック、点滴交換、処置、
検査・手術送り出し、排泄介助、入浴介助
11:30〜休憩
12:00〜昼食の配膳、食事介助
12:30〜投薬、口腔ケア
13:00〜手術や検査への移送や受け入れ
14:00〜記録、バイタルチェック、入院患者対応
16:00〜点滴交換
16:30〜夜勤看護師への申し送り
17:00退勤

夜勤の一日(2交替制)

時間業務内容
16:00〜出勤、夜間の点滴や投薬の準備
16:30〜日勤看護師からの申し送り
17:00〜巡回、患者の観察、バイタルチェック、点滴交換
18:00〜夕食の配膳、食事介助、食後の投薬、口腔ケア
19:00〜巡回、患者の観察、バイタルチェック、点滴交換
20:30〜就寝前投薬、就寝準備
21:00〜消灯
22:00〜病棟の巡回、記録、点滴交換、ナースコール対応
5:00〜朝の点滴や採血の準備
6:00〜起床、採血、バイタルチェック、投薬、点滴交換
7:30〜朝食の配膳、食事介助、食後の投薬、口腔ケア
8:00〜日勤看護師への申し送り
9:00退勤

仕事・勉強・対人関係、看護師一年目は大変なことがいっぱい!

看護学生の方の中にも、「看護師の仕事はきつい」と思われている方は多いのではないでしょうか?
実際、看護師の仕事が大変と言われるポイントは多くあります。

とにかく覚えるべき仕事が多い

一年目の看護師は、一日でも早く自立して働けるように、覚えることが多くあります。
特に夏頃は、できる業務も受け持ち患者も増え、看護技術の練習は残業して行うことも多いです。
看護師という仕事は、一つの小さなミスでも重大な危険を招きかねません。
そういった緊張感の中で仕事をしつつ、看護技術の練習を行わなければならず、
精神的にも身体的にも負担がかかりやすいです。

ただ、仕事が大変なのは同期の看護師も同じですし、先輩看護師も必ず大変だった一年目があります。
周りの人に話を聞いてもらったり、先輩にアドバイスを貰うなどして上手に乗り越えていきましょう。

仕事をしながらの勉強が大変

前述の通りですが、早く自立して業務を行えるようになるために勉強はかかせません。
ただでさえハードな仕事をしている上に、プライベートを削って学習に当てるということです。

忙しい業務で、分からないことを調べたり、上司から課題が出たりと大変ですが、
勉強したことは、看護師として働く中で必ず活きる時が来ます。
スキマ時間を活用したり、自分なりの方法を試すなどして勉強に取り組んで下さい。

そしてこれが一番重要ですが、「体が持たない…」と思ったときは潔く寝ましょう。

先輩とのコミュニケーションが難しい

看護師の転職理由としてもよく挙がるのが「対人関係」の問題です。
特に、先輩看護師に対してはかなり気を遣うことを強いられます。

分からないことがあっても、先輩が忙しそうで質問ができない。
結果的にそれがミスに繋がって、厳しく指導されるというパターンが多いです。

看護師は、小さなミスが人の命に関わってしまうような責任の伴う仕事です。
取り返しのつかない失敗をする前に、周りの人に意見を求めましょう。

もちろん、人間には様々なタイプがありますし、性格的に合わないという人もいます。
そうした場合には、自分のプリセプターでなくても、聞きやすい先輩看護師、師長に相談してみて下さい。

きついけれど、一年目の経験は必ずあなたを成長させる

ここまで看護師の大変な点を挙げてきて、「看護師って辛いことばっかじゃん…」と思った方も多いでしょう。
しかし、一年目を頑張って乗り越えるとそれだけ多くのメリットがあります。

二年目から指導してくれる人はいなくなる

これはメリットと言えるかわかりませんが、二年目になると途端に先輩の目が離れます。
つまり、自分の業務を見守ってくれる人がいなくなり、より責任の重い立場になるということです。

新人だからと気にかけてくれた先輩も新しく入った新一年目に時間を使うことになり、
一年目のときよりも、質問しづらい状況になります。

先輩の監視から逃れて喜んでいても、看護業務ができなければ一年目以上に怒られます。
一年目でしっかり看護業務を身に着け、一人前の看護師として働けるだけの下地を作っておきましょう。

辛いことから開放される

二年目になると看護業務を効率的に行えるようになり、仕事の忙しさに忙殺されることは少ないです。
また、自立して看護業務を行えるため、先輩の目を気にする機会も減ります。
一年目に比べ、精神的にかなり楽になるので勉強やプライベートの時間を確保しやすくなります。

新しい領域の勉強や趣味に時間を使えるので、一年目よりも辛さがなくなったという看護師も多いです。

キャリアの実現につながる

新卒で入職した病院で、基礎的な看護技術・知識をつけておくことはキャリアアップにも効果があります。
仮に、転職や休職をしてしまった場合、「早期退職をする人」「研修を受けきっておらず、看護のスキルが低い人」とされてしまい、看護師としての評価が下がってしまうことがあります。

逆に、新卒で入り3年以上の勤続年数があり、プリセプター業務(後輩指導)を経験があると、即戦力とされ自分の望む仕事への転職が比較的容易になります。
「夜勤・残業なし」や「管理職採用」などの働き方を目指すのであれば、まだ新人看護師の内にスキルアップしておくことをおすすめします。

しかし、働いていく中でうつ病や不眠症といった健康障害が出た場合や、働いている病院が労働基準法に反している場合には、転職したほうが良い場合もあります。

まとめ「一年目はつらい、でも成長できる!」

当記事では、看護学生の方に向けて、看護師一年目の業務内容と気になるポイントについて解説しました。

伝えたいことは、看護師の仕事は大変だけど乗り越えれば相当成長できるということです。

一年目の大変な部分もお伝えしたので、「看護師きついじゃん…嫌だなぁ」ではなく、
「勉強が大変らしいから、今のうちにスキマ時間で勉強する方法を探そう」とか
「早く夜勤がない職場に転職するために頑張るぞ!」というふうに
前向きに考えていただければ幸いです。

きっと辛いこともあるかと思いますが、皆さんの看護師一年目の経験がより良いものになるように心から願っています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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