「看護師」「年収」と聞けば、「他の職業に比べて年収が高い」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?実際に、看護師の平均年収は他の職種に比べて高めです。
では、高所得者といわれる年収1,000万円を超えることは可能なのでしょうか?
結論から言うと、看護師として年収1,000万円を超えることは簡単ではありません。しかし、相応の努力と行動をすれば可能となります。
本記事では、実際に看護師が年収1,000万円を超える方法を網羅的にご紹介していますので、ぜひ最後までお付き合いください。
看護師が1,000万円を稼ぐことは可能なのか?
全国で年収1,000万円を超えている人はどのくらいいる?
まずは年収1,000万円を超える人は日本国内にどのくらいいるのかを見ていきましょう。
国税庁が発表している民間給与実態統計調査によると、日本における給与所得者は約5,000万人います。そして、そのうち年収1,000万円を超えている人の割合は5%程度です。もちろんこのデータは、日本全国の給与所得者が対象のため、業界・職種、年齢などによって偏りはありますが、目安として20人に1人が年収1,000万円を超えているということになります。
看護師として年収1,000万円を超えるのは難易度は高い
5%という数字が高いと感じるかは人それぞれだと思いますが、このあとご紹介する看護師の平均年収からすると、年収1,000万円を超えている看護師の割合は5%よりも少ないと推測でき、看護師として年収1,000万円を稼ぐことは難易度が高いことが想像できます。
実際に年収1,000万円以上を稼いでいる看護師がどのくらいいるのかというデータは見当たりませんでしたが、少なくとも一定以上の役職に就く必要がありそうです。
詳しくは「病院で年収1,000万円稼ぐ方法」の項目をご参照ください。
看護師の平均年収
看護師として年収1,000万円を稼ぐ難易度が高そうだということがわかったところで、看護師の平均年収を具体的にデータを用いて見てみましょう。今回は年齢別、都道府県別にまとめました。どの場所、どの年齢でどのくらいの年収がもらえるのかを理解することで、自分が今どの位置にいるのかを把握しましょう。
看護師の平均年収は全国平均よりも高い
冒頭でも述べた通り、看護師の平均年収は全職種の平均年収よりも高いです。令和2年賃金構造基本統計調査に掲載されているデータによると、看護師の平均年収は以下のとおりです。
平均月収 | 平均賞与 | 平均年収 |
---|---|---|
338,400 | 857,500 | 4,918,300 |
平均月収は33万8,400円となっており、年収に換算すると491万8,300円となります。全国の給与所得者の平均給与が436万円(出典:令和元年分民間給与自体統計調査)となるため、看護師の平均年収が全国平均よりも60万円近く高いことがわかります。しかし、年収1,000万円に到達することを考えるとまだ倍以上の差があります。このデータから、看護師として年収1,000万に到達することは簡単ではないということが分かります。
年齢別で見る看護師の平均年収
それでは次に、看護師の平均年収を年齢別にするとどうなるのかをみていきましょう。
以下の表は、看護師の平均年収を20歳から5歳刻みに示したものです。
年齢層 | 月収 | 賞与 | 平均年収 |
---|---|---|---|
20~24歳 | 284,500 | 490,500 | 3,904,500 |
25~29歳 | 313,700 | 755,000 | 4,519,400 |
30~34歳 | 324,000 | 795,300 | 4,683,300 |
35~39歳 | 332,200 | 822,300 | 4,808,700 |
40~44歳 | 342,900 | 921,600 | 5,036,400 |
45~49歳 | 360,900 | 1,012,900 | 5,343,700 |
50~54歳 | 373,300 | 1,037,900 | 5,517,500 |
55~59歳 | 380,800 | 1,063,200 | 5,632,800 |
60~64歳 | 336,100 | 806,900 | 4,840,100 |
65~69歳 | 305,500 | 517,300 | 4,183,300 |
70歳~ | 312,300 | 198,800 | 3,946,400 |
年収のピークは概ね50代に迎えることがこの表から読み取れます。しかし、そのピークでさえ560万円ほどなので、年収1,000万円にはまだ遠い印象を受けます。また年収という観点からは、70歳を超えても平均年収が400万円近くいくことは、看護師として働く上で魅力的な点だと思います。
都道府県別で見る看護師の平均年収
それでは次に、看護師の平均年収を都道府県別にまとめた表を見ていきましょう。なお、勤続10年、31~32歳、非管理職の看護師の平均データとなっています。
なお、平均賞与については記載がなかったため、概算として平均月収の2.5倍して算出しています。
都道府県 | 平均月収 | 平均年収 | 都道府県 | 平均月収 | 平均年収 |
---|---|---|---|---|---|
北海道 | 314,918 | 4,566,311 | 滋賀県 | 323,631 | 4,692,650 |
青森県 | 296,379 | 4,297,496 | 京都府 | 324,061 | 4,698,885 |
岩手県 | 312,229 | 4,527,321 | 大阪府 | 338,228 | 4,904,306 |
宮城県 | 313,205 | 4,541,473 | 兵庫県 | 326,172 | 4,729,494 |
秋田県 | 307,084 | 4,452,718 | 奈良県 | 325,672 | 4,722,244 |
山形県 | 314,574 | 4,561,323 | 和歌山県 | 311,191 | 4,512,270 |
福島県 | 302,070 | 4,380,015 | 鳥取県 | 315,836 | 4,579,622 |
茨城県 | 318,997 | 4,625,457 | 島根県 | 319,338 | 4,630,401 |
栃木県 | 314,150 | 4,555,175 | 岡山県 | 298,268 | 4,324,886 |
群馬県 | 314,443 | 4,559,424 | 広島県 | 311,828 | 4,521,506 |
埼玉県 | 333,397 | 4,834,257 | 山口県 | 308,736 | 4,476,672 |
千葉県 | 342,982 | 4,973,239 | 徳島県 | 299,495 | 4,342,678 |
東京都 | 349,331 | 5,065,300 | 香川県 | 297,878 | 4,319,231 |
神奈川県 | 340,027 | 4,930,392 | 愛媛県 | 296,517 | 4,299,497 |
新潟県 | 318,735 | 4,621,658 | 高知県 | 286,178 | 4,149,581 |
富山県 | 317,647 | 4,605,882 | 福岡県 | 302,069 | 4,380,001 |
石川県 | 315,701 | 4,577,665 | 佐賀県 | 287,756 | 4,172,462 |
福井県 | 313,244 | 4,542,038 | 長崎県 | 294,175 | 4,265,538 |
山梨県 | 324,015 | 4,698,218 | 熊本県 | 283,738 | 4,114,201 |
長野県 | 315,400 | 4,573,300 | 大分県 | 297,860 | 4,318,970 |
岐阜県 | 318,449 | 4,617511 | 宮崎県 | 279,432 | 4,051,764 |
静岡県 | 335,147 | 4,859,632 | 鹿児島県 | 284,008 | 4,118,116 |
愛知県 | 332,125 | 4,815,813 | 沖縄県 | 307,982 | 4,465,739 |
三重県 | 330,769 | 4,796,151 |
平均年収が最も高いのは東京都となりました。平均年収の一番低い宮崎県と一番高い東京都を比べると100万円以上の差があります。やはり、首都圏や都市部にいくほど年収が高い傾向にあり、働く地域によって大きく差が出ることがわかります。
病院で年収1,000万円稼ぐ方法
これまでに看護師の平均年収を年齢別・都道府県別でみてきましたが、まとめると、首都圏の病院に勤める50代の看護師が年収1,000万円に最も近そうです。年収1,000万円に到達するための要素が集まってきましたが、やはり一筋縄にはいかないですね。それでは、どのような要素が加われば年収1,000万円を稼ぐ看護師に近づけるのか、具体的にどのような行動をすればよいかご紹介します。まずは看護師として病院で働く場合にどうすれば年収1,000万円に到達するのかをご紹介します。
管理職に就く
年収を決める上で重要となるのが役職です。会社においては、課長よりも部長、部長よりも取締役というように役職が上がるにつれ収入は上がるのが一般的です。看護師においても同様、より上の役職に就くほど年収は上がっています。下記の表は、役職別に平均年収と平均年齢をまとめたものです。
なお、こちらも平均賞与平均年収についてはデータの記載がなかったため、概算として平均月収の2.5倍して算出しています。
役職名 | 平均基本給 | 平均年収 | 平均年齢 |
副院長(専任) | 655,071 | 9,498,530 | – |
副院長(看護部長兼任) | 526,212 | 7,630,074 | – |
看護部長 | 427,573 | 6,199,809 | 56.7歳 |
副看護部長 | 405,373 | 5,877,909 | 54.1歳 |
看護師長 | 370,949 | 5,378,761 | 54.0歳 |
副看護師長 | 350,882 | 5,087,789 | 51.3歳 |
主任 | 327,143 | 4,743,574 | 50.1歳 |
表のとおり、副院長クラスまでいけば年収1,000万円見えてきます。実際に出典元のデータを見ると、副院長(専任)56名の回答者の内、月収が80万円以上と回答した人が11名いました。
さらに、看護部長や副看護部長クラスの役職に就いている人の中にも、少数ではありますが月収80万円以上と回答する人がいました。月収が80万円以上でしたら、諸手当等を含めると年収1,000万円は到達すると考えられます。
このように、看護部長クラス以上の役職に就いているかどうかが、年収1,000万円稼げるかどうかの大きな境目になりそうです。このデータにより、管理職に就くことで実際に看護師として年収が1,000万円稼いでいる方は実際にいることが分かりました。
他の病院に転職する
より上の役職に就くことで年収1,000万円を稼ぐことが可能となることが分かりましたが、どんなに上の役職に就いても病院によっては高収入を得ることができないケースもあります。逆に言えば、そこまで高い役職に就かなくても給与水準の高い病院で働くことで高収入を得られることもあります。これまで看護師の平均年収についてさまざまな観点からまとめてきましたが、あくまで平均だということです。看護師は比較的転職しやすい職業ですので、結局は給与水準の高い病院に転職するというのが、年収を上げるために手っ取り早い方法です。
今の自分の年齢、年収、働いている病院の給与水準などを考え、自分はどの時点でどのくらいの年収になっているのかをイメージし、転職するべきかを検討するとよいでしょう。
資格を取る
看護師としてスキルアップするために資格を取ることも有効な方法です。
年収1,000万円を稼ぐためには、ある程度上の役職に就くことはほぼ必須であると紹介してきました。しかし、役職に就くためにはそれなりに経験や実績などが必要です。資格を取ることで、看護師としてできることの幅が広がったり、転職や役職に就くためのアピールにもなります。ぜひ取得してみてください。
認定看護師
認定看護師は、
特定の看護分野における熟練した看護技術及び知識を用いて、あらゆる場で看護を必要とする対象に、水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ることを目的としてできた制度
日本看護協会:https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn
です。看護師として単純にスキルアップしたい方にもおすすめの資格です。
5年以上の実務研修が必要となります。現在、全国に2万人ほどが登録しています。
専門看護師
専門看護師は、
複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的」としてできた制度
日本看護協会:https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cns
です。認定看護師が全国に2万人程度いるのに対し、専門看護師は2千人程度しかいません。より高度な専門的知識をつけたいと考えている方はぜひチャレンジしてみてください。
医療経営士
医療経営士とは、
医療機関をマネジメントする上で必要な医療および経営に関する知識と、 経営課題を解決する能力を有し、実践的な経営能力を備えた人材
一般社団法人日本医療経営実践協会:http://www.jmmpa.jp/about/ )
を目指す資格です。こちらの資格を取得することで経営的な視点から病院を見ることができ、医療経営士として働くこともできます。役職も上にいけばいくほど、組織の運営や看護師の教育など、マネジメント能力が求められます。特に副院長を目指すのであれば取得しておくと有効な資格となります。3級から1級まであるので、気になる方はまずは3級からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
その他で年収1,000万円稼ぐ方法
これまでは、あくまで看護師として病院で働く場合に年収1,000万円を稼ぐ方法をご紹介してきました。しかし、看護師の経験を生かして、活躍の場を病院以外に移すことによって年収を大幅アップさせる例もあります。病院以外で働いてみたいとお考えの方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
美容クリニックへの転職
脱毛クリニックや、美容整形クリニックなどは、美容クリニックは多くの人にとって身近なものとなり、最近盛り上がりをみせていますよね。そんな美容クリニックに転職することも一つの選択肢です。ただし、美容クリニックに転職したら必ず年収1,000万円達成するというわけではなく、病院にはなくクリニックには存在するのがインセンティブです。お客様への施術だけではなく、施術中にケア用品の購入を勧めたり、他のコースへの契約を取るなどすれば、営業成績が評価され、それに伴ってもらえる給与が増えます。もちろん、年収1,000万円に到達するためにはそれなりに頑張る必要がありますが、自分の頑張り次第で収入を増やせる点は魅力的です。こちらは特にお客様とのコミュニケーションや営業が苦に感じない方はおすすめです。
一般企業への転職
病院やクリニックの垣根を超え、一般企業に転職するのも一つの手です。看護師としての経験を活かせる企業としては、製薬会社や、医薬品開発の会社などです。特に、臨床開発モニターとしてCRO(医薬品の開発を支援する企業)などで働き、管理職に就いた段階で年収1,000万円を超えたというケースもあります。看護師の経験以外にも身につけるスキルはありますが、年収1,000万円を達成するためにはかなり現実的な道だといえます。
開業する
最後に、独立して自分で病院などを開業する方法です。一番覚悟が必要な方法かもしれませんが、自分の頑張り次第で、年収はどれだけでも上がっていきます。看護師資格を生かして老人ホームを開く方や、助産師の資格を取得して助産院を開く方もいらっしゃいます。独立するためには、看護師としての現場経験はもちろん、経営、会計、法務など幅広い知識や行動力が必要になり、また様々なリスクを抱えることになるためハードルは高いですが、一番夢がある選択肢といえるでしょう。
まとめ
看護師が年収1,000万円を目指す道は存在する
いかがでしたか?看護師で年収1,000万円なんて無理だと思っていた方も多かったと思いますが、1,000万円に到達する道は意外にも多く存在します。この記事を見ている方は、看護師として年収1,000万円を目指したいと考えていたり、少なからず年収1,000万円に興味を持っている方だと思います。看護師として年収1,000万円を稼ぐことは決して簡単ではありません。それなりの努力と行動力、場合によっては運も必要になります。今の自分の置かれている状況を踏まえ、自分が何歳までにどのくらいの年収を稼いでいたいか?実現したいことのためにどのくらいのお金が必要なのか?ではそのためにどんな行動をしなければならないか?など、単に年収1,000万を目指すことを目標にするのではなく、高収入を得ることでどんなことを実現・達成したいのかを考えると、途中で諦めたりやる気がなくなることも少なくなるでしょう。
一番現実的な道は転職
この記事の締めに、看護師で年収1,000万円を稼ぐ方法として、給与水準の高い病院に転職することを一番おすすめします。つまり、なるべく給与水準の高い病院で最終的に管理職に就くことを目指す方法です。もちろん難易度は決して低くありませんが、看護師は比較的転職しやすく、実際に40代以上の看護師の6~7割は転職を3回以上経験しています(出典:看護のお仕事 https://kango-oshigoto.jp/media/article/845/ )。
看護師の経験を生かして、クリニックや一般企業など他の業種や職種に転職する道もありますが、転職後も新たなスキルの取得が必要になるなど、障壁が高い場合も考えられます。
看護師として他の病院に転職すれば、仮に年収1,000万円に届かなくても、高収入を得ることはかなり現実的だといえます。
まずは別の病院への転職を検討してみてはいかがでしょうか?
音楽専門学校を卒業後、外資系メーカーの日本法人にて営業に従事。その後、関西支社の立ち上げや営業部長を経て、30歳から人材紹介を行う。医療・IT業界を中心に、これまでに紹介件数400件以上、面談件数2,000人以上の実績を積む。特に医療分野では、日本全国の医療施設を周り、各地の地域性を学びIターンやUターン転職支援も行う。一人一人のキャリアプランも見据えたコンサルをモットーに、「提案する」キャリア支援を心がけている。