看護師が「スキルアップしたい」と考えたときに、まず思いつくのが資格だと思います。
ただ、数多くある資格の中で自分にあったものを選ぶのって難しいですよね?
当記事では、これまで400件以上の看護師転職をサポートしている私が、
メジャーな資格から診療科ごとのおすすめ資格までまるっと紹介していきます。
目次
看護師が資格を取得するメリット
看護師が看護師資格以外の資格を取得すると、以下のようなメリットがあります。
- 仕事の責任が増し、裁量が増える
- 後輩教育など職務範囲が広がり、やりがいが増える
- スキルや資格を取得したことで昇進しやすい
- スキルアップ、昇進により給料がアップする
- 資格取得により資格手当などがつく
- スキルがあることによって転職の際に有利になる
- 結婚や出産などで退職後、再就職時に有利になる
ここで注意しておきたいことが、資格によって給料がアップするか否か、資格手当がつくか否かは、病院によるということです。
資格によって給料を上げたいと考えている方は、働いている病院が対応しているかを予め確認しておきましょう。
試験の受験料、勉強時間などのコストはありますが、
基本的にはメリットしかないので興味のある方はチャレンジしてみてはいかかがでしょうか?
看護師がスキルアップするために取るべき4つの資格
認定看護師
認定看護師とは、日本看護協会の定めた19の看護分野における熟練した看護技術及び知識を用いて、あらゆる場で看護を必要とする対象に、水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護ケアの広がりと質の向上を図ることを目的としてできた制度になります。
認定看護師教育機関での教育を受けた後、認定審査を合格することで「認定看護師」を名乗ることができ、
2019年7月時点で、20,960人の認定看護師が全国で活動しています。
2019年の認定審査では、受験者数1,496名中1,329名が合格しており、試験難易度はそれほど高くないといえます。
受験資格 | 看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること (うち3年以上は認定看護分野の実務研修) |
分野一覧 | 感染管理、がん放射線療法看護、がん薬物療法看護、緩和ケア、クリティカルケア、 呼吸器疾患看護、在宅ケア、手術看護、小児プライマリケア、新生児集中ケア、 心不全看護、腎不全看護、生殖看護、摂食嚥下障害看護、糖尿病看護、 乳がん看護、認知症看護、脳卒中看護、皮膚・排泄ケア (2020年度から21分野から19分野に変更された) |
取得方法 | 認定看護師教育機関入学・修了 (1年以内、800時間程度の集合教育) ⬇ 認定看護師認定審査 ⬇ 認定看護師認定証交付・登録 ⬇ 5年ごとに更新(看護実践と自己研鑽の実績について書類審査) |
【参考】:資格認定制度丨日本看護協会
認定看護管理者
認定看護管理者は、多様なヘルスケアニーズを持つ個人、家族及び地域住民に対して、質の高い組織的看護サービスを提供することを目指し、看護管理者の資質と看護の水準の維持及び向上に寄与することにより、保健医療福祉に貢献することを目的としてできた制度です。
受験資格を満たした上で、書類審査及び筆記試験に合格することで「認定看護管理者」を名乗ることができます。
2018年12月時点で、3,772人の認定看護管理者が全国で活動しています。
合格者は例年70%以上となっており、難易度がとても高いわけではありません。
受験資格 | 看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること + 下記のいずれかの要件を満たすこと 要件1:認定看護管理者教育課程サードレベル(510時間)を修了している者。 要件2:看護系大学院において看護管理を専攻し修士号を取得して いる者で、修士課程修了後の実務経験が3年以上ある者。 要件3:師長以上の職位で管理経験が3年以上ある者で、看護系 大学院において看護管理を専攻し修士号を取得している者。 要件4:師長以上の職位で管理経験が3年以上ある者で、 大学院において管理に関連する学問領域の修士号を取得している者。 |
取得方法 | 認定審査(書類審査・筆記試験) ⬇ 認定看護管理者認定証交付・登録 ⬇ 5年ごとに更新(看護管理実践の実績と自己研鑽の実績等) |
【参考】:資格認定制度丨日本看護協会
専門看護師
専門看護師は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかることを目的とした制度です。
受験資格を満たした上で、書類審査及び筆記試験に合格することで「専門看護師」を名乗ることができます。
2018年12月時点で、2,279人の専門看護師が全国で活動しています。
2018年の認定審査では、受験者数257名に対して196名合格しており、審査自体の難易度は高くないです。
しかし専門看護師を目指す場合、一般的には退職や休職をして大学院に通うことになるため、取得難易度は高いと言えるでしょう。
受験資格 | 看護系大学院修士課程修了者で日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準 の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること + 実務研修が通算5年以上あり、うち3年間以上は専門看護分野の実務研修であること |
分野一覧 | がん看護、精神看護、地域看護、老人看護、小児看護、母性看護、慢性疾患看護、 急性・重症患者看護、感染症看護、家族看護、在宅看護、遺伝看護、災害看護 以上の13分野 |
取得方法 | 認定審査(書類審査・筆記試験) ⬇ 専門看護師認定証交付・登録 ⬇ 5年ごとに更新(看護実践の実績、研修実績、研究業績等書類審査) |
【参考】:資格認定制度丨日本看護協会
ケアマネージャー(看護支援専門員)
ケアマネージャーは、介護を必要とする人がよりよい生活を送れるように、要介護者やその家族と相談し、最適なケアサービスを提供する仕事です。訪問介護などの在宅サービスを受けるためのケアプランの作成や、自治体やサービス事業者との調整を行います。
受験資格をクリアした上で、「介護支援分野」「保健医療福祉サービス分野」の2つの分野から出題される試験に合格すると「ケアマネージャー」の資格を手に入れることができます。
2020年の資格試験では、受験者数46,415名に対して合格者は8200名となっており、合格率は17.7%です。
例年20%以下の合格率となっており、ケアマネージャーは難関試験であるといえます。
受験資格 | 看護師・准看護師免許取得後、実務研修が通算5年以上あること (かつ業務に従事した日数が900日以上) |
取得方法 | 介護支援専門員実務研修受講試験 ⬇ 介護支援専門員実務研修(講義(15日)と実務(3日)) ⬇ 5年ごとに更新(研修を受講) |
看護師の分野別、プラスになる資格はこれ!
精神科
精神科の看護師は、一人ひとりの患者に向き合い、気持ちを理解した上で心のケアを行う必要があります。
そのため、患者の声のトーンや表情などから、小さな変化に気づく観察力も求められます。
そんな精神科の看護師におすすめの資格は、やはり心理系の資格になります。
中でも、2019年に初の心理系国家資格として認められた「公認心理師」などはチェックしておくと良いでしょう。
- 公認心理師
- 臨床心理士
- 認知症ケア専門士
- 精神保健福祉士
- 産業カウンセラー
- チャイルドカウンセラー
整形外科
整形外科の看護師で最も重要なのは患者のADL(日常生活動作)を向上させることです。
特にJSMNCは、整形外科病棟以外に脳神経外科・内科、リハビリテーション科の看護師が対象であり、
外来やクリニック、療養施設、福祉施設などでも活動の場があるのでおすすめになります。
- 日本運動器看護学会認定運動器看護師(JSMNC)
- 回復期リハビリテーション看護師
- 骨粗鬆症マネージャー
- 学会認定運動器看護師
- 登録リウマチケア看護師
- 日本アロマセラピー学会認定看護師
小児科
小児科では、感染症から呼吸疾患まで外科的処置以外すべての疾患に対応しています。
そのため、働く看護師も小児に関する幅広い知識と技術が必要です。
小児科の看護師は、子どもについての理解を深める保育士の資格、
子どもやその家族の心のケアのための心理系資格を持っているといいでしょう。
- 臨床心理士
- 社会福祉士
- 保育士
- 医療環境管理士
- 思春期保健相談士
- 新生児蘇生法(NCPR)インストラクター
- 日本アロマセラピー学会認定看護師
- チャイルドマインダー
産婦人科
産婦人科の看護師に必要なスキルは、
「妊婦さんの精神的援助」「妊娠や出産に関する知識」「小児に関する知識」になります。
分娩には助産師が関わりますが、同じ場所で働く看護師にも出産に関する知識は必要です。
そのため、心理系の資格や妊娠・出産への知見を高められる資格を取るとスキルアップが見込めます。
産婦人科でキャリアアップを望むなら、助産師の資格を取り、助産師として働くのも良いかもしれません。
- 助産師
- 新生児蘇生法(NCPR)インストラクター
- BLS・ACLS・PALSプロバイダー
- 体外受精コーディネーター
- 弾性ストッキングコンダクター
- 不妊カウンセラー
- マタニティピクス認定インストラクター
- 臨床心理士
- リンパ浮腫療法士(LT)
- 日本アロマセラピー学会認定看護師
循環器科・呼吸器科
循環器科では、心筋梗塞や不整脈など心臓と血管に関わる病気を扱い、
呼吸器科では、主に気管・肺・胸郭などの病気を扱います。
どちらも専門性の高い診療科のため、知識やスキルを伸ばす資格をいくつか紹介します。
- インターベンションエキスパートナース(INE)
- 循環器専門ナース
- 禁煙支援士
- 学会認定自己血輸血看護師
- 学会認定臨床輸血看護師
- 血管診療技師(CVT)
- 抗酸菌商症エキスパート
- 呼吸ケア指導士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 人工心臓管理技術認定士
- 心臓リハビリテーション指導士
- 日本摂食炎嚥下リハビリテーション学会認定士
- BLS・ACLS・PALSプロバイダー
消化器科
消化器内科では、内視鏡を用いるケースが多く、内視鏡治療の介助・看護に関する知識、スキルは不可欠です。
「消化器内視鏡技師」はかなり専門的なスキルになるので、持っていると重宝されるでしょう。
消化器外科では、食道がん、胃がん、大腸がんといったがん患者が多いです。
消化器系は、がんの発生率が高い場所であるため、「日本癌治療学会認定データマネ―ジャー」などの、がんに関する知識を深められる資格をとると役に立つでしょう。
- 栄養サポートチーム専門療法士(NST専門療法士)
- 消化器内視鏡技師
- 日本口腔ケア学会認定資格
- 日本摂食炎嚥下リハビリテーション学会認定士
- 日本癌治療学会認定データマネ―ジャー
- リンパ浮腫療法士(LT)
- 医療リンパドレナージセラピスト
- 経絡リンパマッサージ・セルフケアアドバイザー
腎臓・内分泌科
腎臓内科は、透析を必要とする患者が多く、看護師であっても透析治療に深い知識を持っていなければなりません。
「透析技術認定士」は、透析のスペシャリストとして病院やクリニックからの需要が高いのでキャリアアップにつながります。
内分泌科では、検査や治療などの業務に加えて、服薬指導、生活指導といった患者教育も重要になります。
患者の生活習慣改善につながる「健康医療コーディネーター 」「健康運動指導士」などは業務に生かせる資格です。
- 透析技術認定士
- 健康医療コーディネーター
- 健康運動指導士
- 日本下肢救済・足病学会認定士
- 日本褥瘡学会認定師
- 日本糖尿病療養指導士(CDEJ)
- 日本リウマチ財団登録リウマチケア看護師
- 認知症ケア指導管理士
- 認知症ケア専門士
- 排尿機能検査士
- フットケア指導士
- 臨床心理士
緊急科・手術室
緊急科の看護師の主な仕事は、患者の受け入れの準備、初期治療になります。
重症度や緊急度の高い患者さんが多いので、「BLS・ACLS・PALSプロバイダー 」などの資格を取り、心停止治療の質を高めておくと実務でも役に立つでしょう。
手術室で働く看護師は、その名の通り手術の援助が主な仕事になります。
日本手術看護学会が認定する「実践指導看護師」は、手術看護の質を証明するものになり、
スキルアップにつながります。
- BLS・ACLS・PALSプロバイダー
- 医療環境管理士
- 学会認定自己血輸血看護師
- 学会認定臨床輸血看護師
- 呼吸ケア指導士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 視能訓練士
- 周術期管理チーム看護師
- 手術看護実践指導看護師
その他(耳鼻科・眼科・歯科・皮膚科・美容科)
資格の数が少ない診療科に関しては、以下の表でまとめて紹介します。
診療科 | 資格 |
---|---|
耳鼻咽喉科 | ・禁煙認定指導者 ・小児アレルギーエデュケーター |
眼科 | ・眼科コメディカル ・視能訓練士 |
歯科 | ・日本口腔ケア学会認定資格 |
皮膚科 | ・皮膚疾患ケア看護師 |
美容外科・美容皮膚科 | ・認定エステティシャン ・日本アロマセラピー学会認定看護師 |
美容外科看護師の資格については、こちらの記事で詳しく解説しています。
【年齢の壁って本当?】美容外科看護師の業務内容から気になるあれこれを徹底的に解説
まとめ「5年目以降は認定看護師を目指そう」
当記事では、看護師が取るべき資格について解説してきました。
診療科ごとの資格も多く紹介してきましたが、5年以上の看護師経験があるのならば、
メジャーな資格であり、かつ評価されやすい「認定看護師・専門看護師」をおすすめしています。
ただ、診療科ごとの資格には5年以内でも取得可能なものもあるので、
実務期間が5年に満たない看護師でスキルアップしたい方は、それらの資格を受けてみても良いかもしれません。
最後に、みなさまの看護師としてのキャリアがより良いものになるよう、心より願っております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
音楽専門学校を卒業後、外資系メーカーの日本法人にて営業に従事。その後、関西支社の立ち上げや営業部長を経て、30歳から人材紹介を行う。医療・IT業界を中心に、これまでに紹介件数400件以上、面談件数2,000人以上の実績を積む。特に医療分野では、日本全国の医療施設を周り、各地の地域性を学びIターンやUターン転職支援も行う。一人一人のキャリアプランも見据えたコンサルをモットーに、「提案する」キャリア支援を心がけている。